『旅する練習』乗代雄介
ちょうど読み終わって、胸に迫るものがあったので、今回はおすすめとは少し違うかもしれないが載せる。
乗代雄介『旅する練習』(講談社)
サッカー少女と小説家の叔父。
2020年のコロナ禍で予定がなくなった春休み、千葉から鹿島アントラーズの本拠地までの徒歩の旅を描く。
第164回芥川賞候補作。
数ある文学賞の中で芥川賞を獲るような作品を最も読んでいない自信があるのだが、近隣図書館の方が「2021年で一番心をかき乱された本になる気がする」と仰っていたのを見て気になり読んだ。
まぁ芥川賞候補作になる通り文章も硬く、読みづらいは読みづらいが、最後のページで確かに心を乱される。
後半三分の一ほどにあった展開はそういうことかと、文章構成のうまさにも唸った。
表紙の装画はカワウだろうか。
p118「本当は運命なんて考えることなく見たものを書き留めたいのに、私の怠惰がそれを許さない。心が動かなければ書き始めることはできない。そのくせ、感動を忍耐しなければ書くことはままならない。」
この文章が良かった。
ジーコの話とみどりさんの出てくるところは読んでいて楽しかった。
おすすめというよりも、これを読んで誰かと語らいたい作品だと思う。