幽霊船は海で踊る

一週間に一度、おすすめ本の投稿をしています。

『キルト―ある少女の物語』スーザン・テリス

この頃、寒いくせに太陽の光があったかくて、休日にひなたぼっこをしていると、外でピクニックでもしたくなる。でもやっぱり外は寒いので、あったかくなったら行こうと思うのだが、いかんせんあったかい時期はまだまだ遠い。

 

 

 

スーザン・テリス『キルト―ある少女の物語』(晶文社

舞台はまもなく20世紀を迎えようという1899年のアメリカ。
農場の娘ネルは、18歳の高校生。大学にすすみ、大好きだったショーおばあちゃんのようにボストンで人びとのために働くことが夢だったが、ある日両親は、いとこのアンソンとの縁談を告げる。
結婚のことなどまだまだ考えられないし、大学へ行くことも、遠い海に出ていくこともできないなんて――やがてネルは、夢を捨て、両親のために結婚を決意するが、絶望が心と体を蝕んでいく。
彼女は唯一の生きる希望として、おばあちゃんの形見の布でキルトをつくりはじめたが……。

最優秀ヤングアダルト図書賞受賞作品。
やがて心を病みどんどんやせ細っていくネルと、唯一の希望として日に日に大きく重なっていくキルトの対比とその描写が繊細で美しい。
その唯一の希望となっていたキルトの真実がわかったとき、ネルのすがっていたものが崩れ去るシーンの虚無感、虚脱感が印象的だった。
読後感のいい作品ではないが、10代だけでなく、かつて10代だったおとなたちにもぜひ読んでもらいたい。