幽霊船は海で踊る

一週間に一度、おすすめ本の投稿をしています。

最近読んだ本

また記事を更新しなくなってしばらく経つし、仕事の整理のためもあって、最近読んだ本のことを書いてみる。

覚書くらいのもので、3月4月に読んだもの。 

滴水古書堂の名状しがたき事件簿 眠れぬ人の夢 (レジェンドノベルス)

滴水古書堂の名状しがたき事件簿 眠れぬ人の夢 (レジェンドノベルス)

クトゥルフ神話がモチーフの小説第二弾。珍しくシリーズものを続けて読んでいる。

軽すぎず重すぎず丁度良い印象。特に、モチーフとなっているクトゥルフ神話を知っている、TRPGをしている人には向いているんじゃないかな。クトゥルフ神話小説を読みたい人には向いていないけど、リプレイ小説が好きな人にはいいと思う。

今後、古戸さんと由宇子の物語はどこにいくんだろうか。クトゥルフ神話好きとしては、もっと強烈な神話生物が見たい、という好奇心がある。

ただ、レビューでも言ったとおり、これを何も知らない人が見たら、おもしろいとか分からないとかの評価もさることながら、どうなってしまうんだろう、という気持ちもある。どうか正気度が削られないようお気をつけて。

そうは言うけど、そこまで過激な描写はないと思うし、神話生物の描写なんかは難しいから、知らない人は想像するのが難しそう。

 

線は、僕を描く

線は、僕を描く

2020年本屋大賞第3位の作品。「水墨画」というあまりなじみのないテーマに対して、読みやすく、引き込まれる世界観。なんといっても特筆すべきはその表現力。目の前で描かれているように感じる表現が素晴らしい。展開、ストーリーよりも、文章で読ませる本だと感じる。

これを描くにあたって、調べてみたら、特設サイトに詳しい用語や、道具の説明、登場人物の紹介などもあったので、サイトを覗いてみるのもいいと思う。

youtu.be水墨画の動画もあったので、見てみたけれど、本文中にあった菊の花の姿の美しさにゾッとした。早く見てほしいが、この動画は、本を読んでからのほうが、その意味が分かってなお感動すると思う。

水墨画への興味も湧く素敵な作品だ。

 

【2020年本屋大賞 大賞受賞作】流浪の月

【2020年本屋大賞 大賞受賞作】流浪の月

こちらも2020年本屋大賞の大賞受賞作品。この作品と、上記の作品しか読んでいないので「圧倒的1位!」とは断言できないものの、おもしろい作品だった。

私も普段はあらすじを読んで、読みたい本を決めているが、この作品はあらすじを読んでいまいちだと思っても、少しだけ読んでみてほしい。簡単に表現されて感じることよりも、実際に読んで感じることのほうがより伝わると思う。

人はイメージでその人を語るものだし、レッテルを貼り貼られてなんてものは、昨今じゃ特によくある話だけど、善意が善意にならない、でもそれは悪意でもない、そんな関係を表現している作品だ。

すべてを知っていく読者は、これ以上2人に関わらないでほしい、どうか放っておいてほしい、そう願ってしまうけれど、たぶんそれは、こうして客観的に見ているからなんだろうな、と思ってしまう。

読みやすくておもしろい作品だった。

 

【第162回 芥川賞受賞作】背高泡立草

【第162回 芥川賞受賞作】背高泡立草

こちらは今回の芥川賞受賞作。たまには芥川賞の作品でも読むか、と思って読んだが、その分量とページに対する文章量のイメージに反してまぁ読みづらい。方言の読みづらさもあるが、文章が硬くてどうにも頭に入ってこない。読むのに結構な時間がかかってしまった。その上読んだあとも「それで何?」という感が否めない。

芥川賞ってみんなこんな感じなのか?と思いながら読んでいた。

平たくすると、帯に書かれた文言が言いたかったこと表現したかったこと、なんだろうが、もうそれがなければ、少なくとも私は何も汲み取れなかった。

 

祝祭と予感

祝祭と予感

蜜蜂と遠雷』のスピンオフ作品。あの上下段300ページの本編を読んでしまうと、とても軽くすぐに読み終わってしまうが、あの作品の世界が好きで、もう少し続きを読みたい、と思った人にはぜひとも読んでもらいたい作品。『蜜蜂と遠雷』の彼らが大好きなので、楽しく読んだが、言ってしまえばサービス、くらいの作品なので、小説としての評価はできないような気がする。ただ読んでいて楽しかった。

 

ゴースト アンド ポリス GAP

ゴースト アンド ポリス GAP

第一回警察小説大賞作品。圧倒的受賞作、ということで気になったがまぁおもしろい!最初はどうかと思ったが、読み進めれば進めるほど続きが気になる。この警官(ごんぞう)たち、まったく仕事はしないが、もしかしたらどの警察よりも仕事はしている。のか?

真面目に勤めを果たす警察と、何もせず交番でしゃべっているだけのこのごんぞうたち。一見、警察のお荷物、恥さらし、悪がどっちかなど一目瞭然……のはずが、果たして本当に「ごんぞう」は悪なのか?警察は正義の味方なのか?という気持ちにさせられる。が、仕事をしていないのも事実で、褒められたことじゃないのも事実……。

タイトルにある「ゴースト」の部分がいまいち描かれているので、続く、のか?と思っている。続きがあるならぜひ読みたい。

 

【2020年・第18回「このミステリーがすごい! 大賞」大賞受賞作】紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人 (『このミス』大賞シリーズ)

【2020年・第18回「このミステリーがすごい! 大賞」大賞受賞作】紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人 (『このミス』大賞シリーズ)

「このミス」大賞作品。ミステリー自体あまり読むほうではないし、「このミス」に対する信頼もあまりないほうだ。この作品の半ばまでは、本当にすごいのか?と疑問に思いながら読んだし、そのキャラクターの濃さと、その設定の必要性がいまいち感じられないまま読んでいたが、中盤を超えてから物語の続きが気になり始め、またその設定にも納得していった。なにより、本の仕掛け自体がとても凝っているので、「本」という作品としてもおもしろい。「紙鑑定士」という特殊な設定でどこまでネタが広がるのか分からないが、続きそうではあるし、続くのなら読んでみたい気持ちはある。

 

珍しく長々と書いたが、特におすすめするのは『線は、僕を描く』『流浪の月』『ゴーストアンドポリス』のあたりかな。

言わずもがな、『蜜蜂と遠雷』を読んだ人には『祝祭と予感』をおすすめしたい。ちなみに、映画はいまいちだった。