今ふたたび本の話
本との出会いは一期一会であり運命だ。
たとえそれがどんな本であろうと、その縁を逃してはならない。
本には魔物が棲んでいる……。
ときどき、文字を読まないと呼吸ができないときがある。それは、いくつもの本を読んでいるときによく起こるのだが、文字を読み、言葉を喰んで、そうやってやっと呼吸ができている。そんなふうに感じるときがある。
それはきっと、本に棲む魔物に取り憑かれているのだろう。
図書館で働いていると、それをよく感じるときがある。
規則的に並んだ書棚。本たち。カウンターに座っていると、その息遣いまで聞こえてくるようだ。
本なぞ、言ってしまえば、ただ文字の書かれた紙の束でしかないのに、どうしてこんなにも、人の心を捉えるのだろう。
物語を読み終わって、あるいは中断して、本を閉じたとき、あの世界が幻だったのだと、ただの物語でしかなかったのだと知ったとき、少しばかり絶望する。
それほどまでに物語は、人を魅了する。それは、本に魔物が棲んでいるからに違いない。
さて、休日の間に、本を読み終えてしまった私は、手元に物語がないことに絶望している。文字がなければ呼吸もできない。
本に棲む魔物はいつでも、私たちを狙っている。きっといつか、その魔物に殺されるのだろう。