世界の果ての景色
去年の末、2泊3日で和歌山の白浜に行った。アドベンチャーワールドを目的とした旅だったのだが、それだけではもったいないので、千畳敷や白良浜など、いろいろ見てまわった。
海のそばで育った私でも驚くほどに海は綺麗だし、千畳敷の自然の偉大さと不思議さを感じる景色は今でも目に焼きついている。
けれども一番、思い出に残っているのは、そういった観光地ではなかった。
観光案内に載っていない場所。地図にも載っていないような、そんな場所が、ずっと私の心を捉えている。
駐車スペースの脇に獣道がある。それをずっと進んでいくと、ぽっかりと大きな穴の空いた場所に出るのだ。まさに断崖絶壁。何も知らずに歩いていたら、落ちてしまうかもしれない。
下を覗くと、波が打ち寄せており、今なお岩を削りとっている。
遠くを見ると、獣の寝ぐらのような、不思議な洞窟らしきものの闇が覗いている。
大きな穴の反対側。
断崖絶壁とはうってかわって、岩の平地が広がっている。そこをずうっと歩いていくと、まるでケーキでも切り分けたかのような、これまた大きな切れ込みがある。この切れ込みもまた不思議で、遠くから見ればずっと波打ち際までなだらかに続いているように見えるのに、ふいに切り離されているのである。
平地の続くほうを歩いていると、突然、世界が変わったかのように、でこぼことした赤い岩が続く場所に出る。線を引いたようにきっぱりと分かれているそこは、岩の平地や大きな穴ともまた違って、まさに冒険、探検をしているような、ともすればアスレチックのように過酷な場所になる。端まで歩けば、また違う穴に出くわす。
説明を聞いただけでは、一体どんな場所なのか、検討もつかないだろう。だって、その場にいた私でさえ、なんとも不思議な気分だったのだから。
けれど、その世界の果てのような、何もかもが地球を、人間を見捨ててしまったかのような、波の音だけが耳を突くその場所が、なぜだろう、ずっと心に残り続けているのだ。
きっとあの場所は、本当に世界の果てで、誰の心にもある「端っこ」だったのかもしれない。
随分更新していなかったから、お題で1つ書いてみました。とりとめもない1ページ。