『ラ・フォンテーヌ寓話』ラ・フォンテーヌ
『司書のお仕事』大橋崇行
近所の梅の花が咲き始めました。
ちょっと色あせたような冬の景色のなか、そこだけ色づいていて気分もあったかくなりますね。
味岡市立図書館に新人司書として採用された稲嶺双葉。
1巻では、蔵書目録の作成や、本の受け入れ作業、イベント企画など
2巻では、蔵書点検や司書の雇用形態、行政や地域との関わりなど
をテーマに、ストーリー形式でわかりやすく伝える本。
司書のお仕事って?をテーマに物語形式で解説してくれるこの一冊。
図書館の司書も、学校図書室の司書さんも、専門職であるにもかかわらず、案外その仕事内容を知る人は少ない。
職業体験などで学生さんを受け入れたときも、その仕事量の多さに一番驚かれる。
私が勤める図書館も現在蔵書点検真っ只中で地獄を見ている最中なのだが、2巻ではそのことについてもしっかり描かれている。
1巻は導入編。2巻は発展編という感じ。
図書館の規模によっても仕事内容や勤務形態はかなり違うと思うが、図書館の新人司書にも、中堅司書にも、図書館に興味がある人にも楽しめる内容になっている。
舐められがちな図書館司書の仕事。どんなことをしているのか、見てみませんか?
『八月のひかり』中島信子
早いもので2月ですね。
まわりでは梅の花が咲き始めていて、春は近いなあと思いながら防寒具が手放せない日々です。
中島信子『八月のひかり』汐文社
八月の夏休み。
5年生の美貴は、働くお母さんの代わりに料理や洗濯をして過ごしていた。
美貴は体の弱いお母さんと、2年生の弟・勇希との3人暮らし。お父さんは離婚していない。養育費を払ってくれないこともあって、家は貧しく、お風呂にも満足に入れず、毎日猛暑だというのにエアコンもろくに入れられない。
学校のプールでシャワーを浴び、毎日食べているのはキャベツばかり。
どうしてこんな毎日なの? だれのせいなの?
お母さんに心配させまいと、毎日は幸せだと言い聞かせる美貴だが、ときどきどうしてもそんな疑問を抱かずにいられない。
現代の子どもを取り巻く問題と、繊細な心を描き出した作品。
「子どもの貧困」が問題になっている。無料でごはんを食べられるところや、お寺のお供えもののお下がりを提供するなど、活動は広がりつつあるが、まだまだ問題は解決しそうにない。『八月のひかり』はその問題を子どもの視点から描いた作品だ。
「おなかがすいた」という痛切な思いが、読んでいてキリキリと突き刺さる。
アパートに押しかけてきた父親に、勇希が「僕のお父さんは死んだんだ」と告げるシーンが印象的だった。
『けしゴム』まど・みちお
日中はあたたかいのに、朝と晩は驚くほど冷える。
車のフロントガラスが凍るので、ペットボトルにぬるま湯を入れていくのだけれど、そういうときに限って氷は張っていない。そういう日が何日も続いたので、もういいやと思って手ぶらでいくと、今日は氷が張っていた。
そんな日々を過ごしている。春はまだ遠い。
まど・みちおさんの作品に、上皇后美智子さまの英訳。そしてさらには、去年12月末に亡くなった、安野光雅さんの装画が美しい一冊。
「カメ」
ウサギの きもちが
よう わかる
―ねむいねむい
「キリン」
いすは まっています
とおい ほしからの
きょじんの おきゃくを
もう なんまんねんも…
など、最小限のことばと英訳の、シンプルな構成が素晴らしい。
詩を楽しむだけでなく、持っているだけでしあわせな気分になります。
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幽霊船は海で踊る(2021年1月14日現在)
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『お探し物は図書室まで』青山美智子
久しぶりに積もった雪を見た。ちょうど休みの日だったから、運転の心配をすることなく、純粋に楽しめたけど、雪に慣れない地で育ったため、やっぱり積もった雪を見ると楽しくなる。比較的大きめの(でも雪国の人からすれば小ぶりの)雪だるまを作った。あんな大きな雪だるまがきれいにできるのがうれしかった。小さな頃は、ときどき雪が積もって雪遊びをしても、すぐに土まみれになってしまったから。
青山美智子『お探し物は図書室まで』ポプラ社
仕事や人生に行き詰まる5人が訪れたのは、町の小さな図書室。
「本を探している」と言うと「レファレンスは司書さんにどうぞ」と案内してくれる。
狭いレファレンスカウンターの中に体を埋めこみ、ちまちまと毛糸に針を刺している司書さん。
「何をお探し?」
その不思議な声に、相談者は誰にも言えなかった本音や願望を話してしまう。
図鑑、絵本、詩集……一風変わった選書をした本のリストを印刷した紙と一緒に渡されるのは羊毛フェルト。聞くと「本の付録」だという。
自分が本当に「探しているもの」に気づき、また前を向いて歩ける、心あたたまる小説。
ちょうど読了したので、最近話題の一冊を。
図書館で仕事をしていると、図書室とか図書館とかついた作品がどうしても目を惹く。
青山美智子さんの本は『木曜日にはココアを』を最近読んだのが最初だったのだが、やっぱりこの人はこの手の、人と人とのつながりを描くのが上手い。
小町さんの選書と、人柄は不思議だけれど、こんな司書になりたいなぁと思う。
素敵な言葉がたくさん出てきて、少し心に刺さったり、背中を押してもらったり。
私もがんばろう、と素直に思える小説だった。また読みたい。