『八月のひかり』中島信子
早いもので2月ですね。
まわりでは梅の花が咲き始めていて、春は近いなあと思いながら防寒具が手放せない日々です。
中島信子『八月のひかり』汐文社
八月の夏休み。
5年生の美貴は、働くお母さんの代わりに料理や洗濯をして過ごしていた。
美貴は体の弱いお母さんと、2年生の弟・勇希との3人暮らし。お父さんは離婚していない。養育費を払ってくれないこともあって、家は貧しく、お風呂にも満足に入れず、毎日猛暑だというのにエアコンもろくに入れられない。
学校のプールでシャワーを浴び、毎日食べているのはキャベツばかり。
どうしてこんな毎日なの? だれのせいなの?
お母さんに心配させまいと、毎日は幸せだと言い聞かせる美貴だが、ときどきどうしてもそんな疑問を抱かずにいられない。
現代の子どもを取り巻く問題と、繊細な心を描き出した作品。
「子どもの貧困」が問題になっている。無料でごはんを食べられるところや、お寺のお供えもののお下がりを提供するなど、活動は広がりつつあるが、まだまだ問題は解決しそうにない。『八月のひかり』はその問題を子どもの視点から描いた作品だ。
「おなかがすいた」という痛切な思いが、読んでいてキリキリと突き刺さる。
アパートに押しかけてきた父親に、勇希が「僕のお父さんは死んだんだ」と告げるシーンが印象的だった。