『教室に並んだ背表紙』相沢沙呼
たまたま見た中島敦の全集の中に「鏡花氏の文章」というのがあって、「なんぞや」と思い見てみると
「大威張りで言いたいが、鏡花氏の文章を知らないのは不幸であり、知ることは幸である。鏡花氏は言葉の魔術師、感情装飾の幻術者であり、氏の芸術は麻酔剤か阿片のようなものだ」(大意)
といったことが書かれており、こちらも大威張りで「よくご存知で。ありがとう」と心の中で自慢しました。ただの鏡花さん好きの分際ですが。
『小説すばる』掲載に書き下ろしを加えて単行本化。
「わたしは欠陥品なのかもしれない―」
中学校の図書室を舞台に、クラスへの違和感や友人関係、未来への不安、劣等感など、思春期の心模様を繊細に描く全6編の短編集。
図書室に配属されたばかりのしおり先生を中心に、少しずつ本と本が、人と人が繋がっていく物語。なにか秘密があるんだろうなと思っていたけれど、最後の短編にまんまとやられた。
明日のことが不安な日もあった。消えてしまいたいときもあった。いいことばっかりじゃなかった。今も未来に不安がないわけじゃないけれど、それでもあの頃は、楽しかった、それでよかったと思えるようになったな。そう思わせてくれた作品だった。