幽霊船は海で踊る

一週間に一度、おすすめ本の投稿をしています。

『アスク・ミー・ホワイ』古市憲寿

 

あったかいお鍋とかココアとか、暖房の効いた部屋で食べるアイスとか。
ふわふわの毛布とか電気毛布とか。
そういうのは大好きだけど、寒いのは無理。
朝は真っ暗だし、日が落ちるのも早くて一日があっという間に感じてしまう。
冬はとにかく苦手だ。冬眠できるなら冬眠したい。
でも実際冬眠できたとして、あんまりたくさん食べられないから、
春になる前にそのまま死んじゃうかもしれない。

 

 

アスク・ミー・ホワイ

アスク・ミー・ホワイ

 

 古市憲寿『アスク・ミー・ホワイ』(マガジンハウス)
写真週刊誌のスキャンダル報道によって芸能界から姿を消した元俳優の港颯真。
アムステルダムに移住するも、一緒に移住しようと持ち掛けてきた彼女に裏切られ、日本にも戻らず、アムステルダムに拘りもなく住み続けるヤマト。
あるきっかけで出会ったふたり。
目的もなく意思もなく、明るいとはいえない世界で生きるヤマトには、スキャンダルによって芸能界をやめるも、未だ華やかな世界で自由に生きているように見える港くんがまぶしくて、気になって仕方がない。

 

古市憲寿の小説は『平成くん、さようなら』からずっと読んできて、内容如何によらずとりあえず読んできたけれど、間違いなく今回の作品が一番良かった。
今までの作品から、古市さんがロマンチックストーリー?しかもBL作品?と驚きの連続だったのだが、そんな疑念はすぐに吹き飛んだ。
ところどころに古市節は散見されるものの、読み口も軽く、終始ヤマトが港くんのことを好いていて、港くんもヤマトのことが好きなんだろうな、でもどういう種類の好きなんだろうな、友情の好きだけではないよな、とやきもききゅんきゅんしながら読んだ。
もうずっと2人で幸せに暮らしてほしい。
雲田はるこ先生の装画も素敵で、読み終わると、二人のアルバムを見ているような気持ちになるので、最初はあまり見ずに、読み終わってからじっくりと見るのがおすすめです。
今年読んだ本の中で続きがいちばん気になってすぐに読んでしまった。とにかく読んでほしい。