文学忌
文学忌というものがある。小説家や俳人の命日をそのペンネームや代表作などにちなんで偲ぶ日としたものだ。有名なのは太宰の桜桃忌だろうか。
恥ずかしながら私も最近知ったのだが、桜桃忌だけでなく、檸檬忌や菜の花忌、石榴忌など、粋なものが多い。
なぜ急に文学忌の話を持ってきたのかというと、純粋に憧れるからである。
死んだあとも、そんな風にくだものや花の名前で弔ってくれるなど、なんとも幸せではないか!
もちろん、花やくだものの名前がついているのは、その作家がそれをタイトルにして小説を書いているからなのだけれど。
私はなるべく人目につかないところで朽ちるように死にたいし、できるだけみんなの記憶から抜け落ちたいのだけれど、つまり、そういう弔いはしてほしくないのだけれど、それでもつい憧れてしまう。
私は作家ではないし、おそらく有名になることもないだろうが、もし私が死んで、誰か覚えていてくれるなら、こっそりと私の命日に何か名前をつけてほしい。